スペイン語で「〜になる」を表すとき、volversehacerse のどちらを使うか迷ったことはありませんか? どちらも似たような意味に見えますが、実は変化の原因やプロセスに違いがあります。

今回取り上げるのは、スペインの新聞記事に登場した以下の一文です。

El beisbolista se ha vuelto la cara del equipo que domina en la MLB.
その野球選手はMLBを支配するチームの顔になった。

この文の se ha vuelto はなぜ hacerse ではなく volverse が使われているのでしょうか? ここには、スペイン語特有の繊細なニュアンスの違いが隠れています。

hacerse:「努力やプロセスを経て〜になる」

hacerse は、主体の意思や努力・成長のプロセスが感じられるときに使われます。 つまり、「自分の力でそうなった」という変化を表します。

  • Otani se ha hecho el mejor beisbolista del mundo.
    大谷選手は(努力を経て)世界最高の野球選手になった。

この文では、「練習や実績を積み重ねて結果的にそうなった」という含意があります。 他にも、社会的地位や職業など、自分の行動によって獲得した変化を表すときにぴったりです。

  • Se hizo médico después de muchos años de estudio.
    長年の勉強の末、彼は医者になった。
  • Me hice vegetariano hace cinco años.
    私は5年前にベジタリアンになった(自分の意志で)。

このように、hacerse=「自分で選び取る変化」というイメージを持っておくと分かりやすいでしょう。

volverse:「本人の意思とは無関係に〜になる」

一方の volverse は、本人の努力や意図とは関係なく、性質や状態が変化した結果を表します。 つまり、「気づいたらそうなっていた」「周囲からそう見られるようになった」というニュアンスです。

  • El beisbolista se ha vuelto la cara del equipo que domina en la MLB.
    その野球選手はMLBを支配するチームの顔になった。

この場合、「チームの顔になろうと努力した」というよりも、「活躍の結果、自然とそう認識されるようになった」という意味合いが強いです。 つまり、本人の意思ではなく外部からの評価によって変化が生じた、ということですね。

同じような使い方で、次のような表現もよく登場します。

  • Se ha vuelto un ídolo nacional.
    彼は国民的ヒーローになった。
  • Con el tiempo, se volvió más tranquilo.
    時間が経つにつれて、彼は穏やかになった。
  • Mi perro se ha vuelto muy cariñoso últimamente.
    最近、うちの犬はとても甘えん坊になった。

このように volverse は「性格」「印象」「評価」など、他者から見た変化に自然と使われます。

hacerseとvolverseの使い分けまとめ

動詞意味・ニュアンス例文
hacerse努力・意志・過程を経て〜になるSe ha hecho el mejor jugador del mundo.
努力して世界一の選手になった。
volverse自然な変化・他者評価として〜になるSe ha vuelto la cara del equipo.
チームの顔になった(自然な結果として)。

つまり、「自分の意志」か「外的な結果」かが両者の分かれ目です。 大谷選手のように「周囲がそう認めた結果、チームの象徴的存在になった」というケースでは volverse が自然です。

逆に、たとえば「彼は長年の努力でMVPになった」という文脈であれば、hacerse の方がしっくりきます。 このように、動詞ひとつで文章の背景にある「努力」や「偶然性」まで伝わるのがスペイン語の面白さですね。

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