スペイン語を学んでいると、動詞のあとに形容詞がぽんと置かれていて、「これ、副詞みたいな働きしてない?」と感じる文に出会うことがあります。

例えば、次のような文です。

María y José prefieren seguir viviendo separados por ahora.
マリアとホセは、とりあえず今のところは別々に暮らし続けることを望んでいる。

文の意味自体はそこまで難しくありませんが、separadosの位置だけを見ると、「vivirという動詞を修飾する副詞なのでは?」という感覚に引っ張られてしまいやすいところです。

この記事では、このseparadosのように、一見「副詞っぽく」見えるけれど、実は主語の状態を説明している形容詞について、丁寧に整理していきます。また、副詞por separado / separadamenteとの違いもあわせて確認しておきましょう。

「viviendo separados」のseparadosは副詞ではなく形容詞

まず大前提として、先ほどの文に出てくるseparados副詞ではなく形容詞です。そして、この形容詞が修飾しているのは、直前の動詞vivirではなく、主語のMaría y José(=ellos)です。

María y José prefieren seguir viviendo separados por ahora.

少し噛み砕いて言い換えると、

「マリアとホセは、離れた状態で暮らし続けることを望んでいる」

という意味になります。つまり、文の構造としては、

  • 主語:María y José(ellos)
  • 動詞:prefieren seguir viviendo(暮らし続けることを望む)
  • 主語の状態:separados(離れた状態で)

という形です。「暮らす vivr」 という動作を行っているときの主語の状態を、形容詞separadosで説明しているわけですね。

この「動作をするときの主語の状態」を説明する形容詞は、文法的には「補語」(より正確には主語補語・主語の状態を説明する補語)の一種として扱われます。

感情を表す形容詞で主語の「気持ちの状態」を描写する

同じ仕組みは、感情表現でもよく使われます。例えば、次のような言い方です。

María lo dijo…

  • alegre. 嬉しそうに言った
  • feliz. 幸せそうに言った
  • enfadada. 怒った様子で言った
  • irritada. イラつきながら言った

ここで、形容詞が説明しているのは「言った decir という行為」ではなく、「その言葉を口にしているときのマリアの感情の状態」です。

英語であれば副詞にしてhappily / angrilyのように表現する場面でも、スペイン語では主語の状態として形容詞を置くことが多い、というイメージを持っておくと、ぐっと理解しやすくなります。

身体の状態を表す形容詞:llegar+状態の描写

感情だけでなく、身体的な状態でも同じように使うことができます。例えば、次のような文です。

María llegó a casa…

  • cansada. 疲れた様子で帰宅した
  • dolorida. (どこかが)痛そうな状態で帰宅した
  • enferma. 具合が悪い状態で帰宅した
  • sudorosa. 汗びっしょりの状態で帰宅した

これらも、すべて主語の状態を説明する形容詞です。「帰宅する」という動作に対して、「どのようなコンディションでその動作を行っているのか」を補っているイメージで捉えると分かりやすいと思います。

このような用法は、感情・身体状態・関係性などを細かく描写したいときに非常に便利で、日常会話や物語文の中でも頻繁に出てきます。覚えるべき「型」としては、

主語+動詞+(場所・目的語など)+主語の状態を表す形容詞
→「主語が~の状態で…する」

というパターンで押さえておくと応用しやすくなります。

separados と por separado の違い:「誰の状態」かに注目する

さて、話をseparadosに戻しましょう。スペイン語には、副詞的な表現「別々に」の意味を持つpor separadoseparadamenteも存在します。これらは、今回のseparadosと何が違うのでしょうか。

大きな違いは、

  • separados:主語(人・もの)の状態を表す「形容詞」
  • por separado / separadamente:行為のやり方を説明する「副詞(的表現)」

という点です。ちなみに、por separadoの方が一般的ですので、separadamenteは一旦忘れましょう。

例えば、支払いの場面を考えてみましょう。

  • Queremos pagar por separado.

    私たちは別々で支払いたいです。(=割り勘したい)

ここでのpor separadoは、「支払う」という行為の方法を説明しています。つまり、「支払いをどのように行うか」に焦点が当たっています。

では、もしここを無理に形容詞に変えて、

Queremos pagar separados.

とすると、どうなるでしょうか。この文だと、

「支払いをする際、私たちは離れた状態でいる」

というニュアンスになり、「それぞれ別の場所から支払う(例えば、それぞれ自宅からオンラインで払うなど)」のように、「支払いをする瞬間の私たちの物理的な状態」にフォーカスした文になってしまいます。

同じ「別々に」というイメージでも、

  • por separado → 行為のやり方を説明(副詞)
  • separados → 主語の状態を説明(形容詞)

と役割が異なるため、用途も変わってくるわけですね。

vivir separado:誰かと離れて暮らすという、ごく一般的な表現

今回の文に出てきたvivir separado(複数主語ならvivir separados)は、スペイン語では非常によく使われる、ごく一般的な表現です。

  • Prefieren seguir viviendo separados por ahora.
    彼らは、今のところは別々に暮らし続けることを望んでいる。
  • Llevan muchos años viviendo separados.
    彼らは長年、別々に暮らしている。
  • Viven separados, pero se llevan bien.
    彼らは別々に暮らしているが、仲は良い。

いずれも、「暮らす」という動作をする際の「彼らの関係性の状態」をseparadosで表現しています。ここでpor separadoを使ってしまうと、「暮らす」という行為の「やり方」が別々なのか、主語同士の「物理的・関係的な距離」が離れているのかが曖昧になってしまうので、基本的には関係性・状態には形容詞separadosを使う、と整理しておくと良いでしょう。

まとめ:「副詞っぽく見える形容詞」は主語を見れば怖くない

今回の内容をまとめると、ポイントは次の通りです。

  • María y José prefieren seguir viviendo separados por ahora.separadosは、副詞ではなく主語を修飾する形容詞
  • この種類の形容詞は、「ある動作をする際に主語がどのような状態なのか」を説明する役割を持つ。
  • 例:Los niños llegaron a casa cansados.(到着した時、子どもたちは疲れていた)
  • 感情・身体状態も同じパターン:María lo dijo enfadada. / María llegó a casa enferma.
  • por separado / separadamenteは行為の「やり方」を説明する副詞(的表現)であり、separadosは主語の「状態」を説明する形容詞なので、役割が異なる。

「副詞なのか形容詞なのか」という形式に意識を奪われてしまうと、かえって分かりにくくなりますが、「これは誰の状態を説明しているのか?」という視点で文を眺めてみると、整理しやすくなります。

動詞のあとに形容詞がぽんと置かれている文を見かけたら、まずは一度立ち止まって、「主語の状態を描写しているパターンかもしれない」という可能性を思い出してみてください。

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