スペイン語を勉強していると、一見簡単に見える文ほど「実はネイティブの感覚とはズレている」というケースによく出会います。今回取り上げる Quitar(~を取り除く)の構文もまさにその一つで、学習者の方から非常に多く質問をいただくテーマです。
特に「身体の一部」に対して何かの動作を行う場合、スペイン語では所有者を間接目的語として表現する必要があります。このルールを理解しておくと、スペイン語の文全体が一段と自然になり、文章読み取りの際にも迷いが減ります。
学習者が陥りがちな誤り:Quito el collar de mi perrita.
まず、以下の文を見てみましょう。
Quito el collar de mi perrita.
日本語では「私は犬の首輪を取る」なので、この訳し方で少しも違和感を感じません。しかしスペイン語では、その犬の「身体の一部(=首につけている首輪)」に対して働きかけているため、通常の所有形容詞ではなく間接目的語を使うのがルールになります。
そのため、正しい文は次のようになります。
Le quito el collar a mi perrita.
le が「首輪を外される側=所有者」であり、a mi perrita はその明示的な説明です。スペイン語の身体の一部に対する動作では、この代名詞(le)+ 前置詞句(a mi perrita) の組み合わせが非常に自然な形となります。
身体の一部に働きかける表現は「所有者=間接目的語」で表す
スペイン語では、身体の一部に関する動作を表すとき、所有形容詞(mi, tu, su…)は基本的に使いません。代わりに、間接目的語で「その身体の部位が誰のものか」を示します。
いくつか代表的な例を挙げてみます。
- (○)Le corto el pelo a mi hijo.
息子の髪の毛を切る。 - (×)Corto el pelo de mi hijo.
不自然。身体の一部に対する動作なので 所有de は基本NG。 - (○)Le pongo un sombrero a mi hija.
娘に帽子をかぶせる。 - (×)Pongo un sombrero de mi hija.
意味が「娘の所有する帽子を置く」になり文脈とズレる。
こうした例から分かるように、スペイン語は「身体の一部に対する動作」を特別扱いする言語です。よって、首輪(collar)も「犬の体の一部に付随するもの」と考えられ、上記のルールが適用されます。
Le(間接目的語)は重複が基本|Quito el collar a mi perrita は?
次に、ここで学習者の方がよく抱く疑問が、
「Le = a mi perrita なのだから、le は重複で不要なのでは?」
という点です。確かに、文法的に「二回言っている」ように見えなくもありません。しかしスペイン語では、身体の一部への動作の場合、間接目的語の代名詞を必ず入れるのがネイティブの自然な使い方になります。
| △ やや不自然 | Quito el collar a mi perrita. |
| ○ 自然で標準 | Le quito el collar a mi perrita. |
つまり、a mi perrita があるからといって le を省略できるわけではなく、le が文の中心的要素で、a mi perrita は説明だと捉えると理解しやすいです。
一方で、単純な間接目的語「~に」の場合は le を省略しても問題ありません。
- (○)Envío una carta a mi hermana.
- (○)Le envío una carta a mi hermana.
私は妹に手紙を送る。
このように、身体の一部に対する動作か、それ以外の「~に」なのかで le の扱いが変わります。
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今回取り上げたテーマは、教科書ではあまり深く扱われていないものの、ネイティブが日常的に行っている文法処理であり、自然なスペイン語を話す上で避けては通れません。こうした細かい違いを一つずつ理解していくことで、スペイン語の見え方は大きく変わっていきます。
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