スペイン語の公的資格として世界的に認められているDELE。その中でもC1(上級レベル)は、「高度なスペイン語を実務的・学術的に運用できるか」を証明する試験です。
C1レベルでは、日常会話を超えた抽象的・専門的な内容についても、適切な語彙・論理構成・レジスターを用いて理解・発信できるかが問われます。そのため、B2に合格した後も「何から手を付ければいいか分からない」と感じる学習者が非常に多い試験でもあります。
ただし、DELE C1試験は感覚やセンスだけで評価されるものではありません。各Prueba(科目)とタスクの目的を正しく理解すれば、対策の方向性は明確になります。
この記事では、インスティトゥト・セルバンテス公式ガイドに基づき、DELE C1試験の全体構成と4つのPrueba、それぞれの全タスク内容を、視認性の高いテーブル形式で詳しく解説します。
DELE C1試験の全体構成と配点
| Prueba | 技能 | 試験時間 | 配点 |
| Prueba 1 | 読解と言語使用 | 90分 | 25% |
| Prueba 2 | 聴解と言語使用 | 50分 | 25% |
| Prueba 3 | 文章表現・交流 | 80分 | 25% |
| Prueba 4 | 口頭表現・交流 | 約20分 | 25% |
DELE C1では、どれか一科目だけが突出してできても合格できません。全Pruebaをバランスよく攻略することが合否を分ける最大のポイントになります。
【Prueba 1】読解(90分)
Prueba 1では、専門的・抽象的な文章を正確に読み取り、C1レベルに求められる語彙・文法・談話理解力を総合的に測定します。タスクは全5題です。
| タスク | 内容 | 評価ポイント |
| Task 1 | 公的文書・契約書・規定文(650〜750語)を読み、内容理解の三択問題 | 文書の目的・条件・前提を正確に把握できているか |
| Task 2 | 文学的・記述的文章の段落再構成 | 論理構造・談話マーカーの理解 |
| Task 3 | 専門記事を読み、筆者の態度や意見の変化を判断 | 事実と主観の区別、ニュアンス理解 |
| Task 4 | 短い学術テキストと要約文の対応付け | 情報の取捨選択能力 |
| Task 5 | 高度な語彙・文法の空所補充 | 文脈的に最適な表現選択 |
【Prueba 2】リスニング(50分)
Prueba 2では、様々な形式の音声を聞き取り、内容理解だけでなく話者の意図や態度を読み取れるかが評価されます。
| タスク | 内容 | 評価ポイント |
| Task 1 | 講義・ニュース音声を聞き、要約文の空欄補完 | 要点抽出力・情報整理力 |
| Task 2 | 複数会話の詳細理解(三択) | 具体情報と文脈の一致 |
| Task 3 | 討論・インタビュー音声の論点理解 | 話者立場・対立構造の把握 |
| Task 4 | 短い対話から意図・皮肉を判断 | 社会言語学的ニュアンス理解 |
【Prueba 3】作文(80分)
Prueba 3では、聴解と作文を組み合わせた統合タスクを通して、C1レベルの記述能力と論理構成力が評価されます。
| タスク | 内容 | 評価ポイント |
| Task 1 | 講演音声を聞いて要約+意見文(220〜250語)を書く | 要約力・論理展開・意見構築 |
| Task 2 | 状況に応じたフォーマル文書作成(180〜220語) | 文体・レジスターの適切さ |
【Prueba 4】口頭試験(約20分)
Prueba 4は、準備時間20分+口頭試験で構成され、C1レベルにふさわしい対話力と論証力が求められます。
| タスク | 内容 | 評価ポイント |
| Task 1 | 長文テキストを読んで要約+独話 | 情報整理・論理的一貫性 |
| Task 2 | 試験官とのフォーマルな議論 | 即応力・意見防衛能力 |
| Task 3 | 視覚資料を用いた即興の交渉・対話 | 柔軟性・対話構築力 |
DELE C1合格のためのスコア戦略
DELE C1では、すべての科目で一定以上の力が求められます。 合格(Apto)するためには、以下の2つのグループごとに30点以上(各50点満点)を獲得する必要があります。
- グループ1:Prueba 1(読解)+ Prueba 3(作文)= 30点以上
- グループ2:Prueba 2(リスニング)+ Prueba 4(口頭試験)= 30点以上
ここで重要なのは、どれか一科目で極端に高得点を取っても、それだけでは合格できないという点です。 たとえば、Prueba 1で満点近い点数を取っても、Prueba 3で大きく崩れてしまえば、グループ1全体で30点に届かず不合格になります。
そのため、C1対策では「得意分野をさらに伸ばす」よりも、 苦手分野を6割ラインまで最低限引き上げるという発想が非常に重要になります。
特に多いのが、読解・文法は得意だが、口頭試験(Prueba 4)や作文(Prueba 3)で点が伸び悩むケースです。 逆に言えば、アウトプット系の型と評価基準を理解するだけで、合格可能性は大きく高まります。
DELE C1は「完璧なスペイン語」を求める試験ではありません。 全技能でバランスよく、C1として妥当な運用能力を示せているか、これが最終的な合否判断の軸になります。
まとめ:DELE C1で評価されている本当の能力
ここまで見てきたように、DELE C1で評価されているのは、 「難しい単語をどれだけ知っているか」や 「ネイティブのように話せるか」という一点ではありません。
試験全体を通して問われているのは、 C1レベルの運用者として、情報を整理し、論理的につなぎ、場面に応じた形で表現できているか という点に尽きます。
たとえ語彙選択が多少シンプルでも、 構成が明確で、話の流れが自然であれば、評価としては十分にC1水準です。 一方で、背伸びをして複雑な構文や表現を使おうとし、 論理や一貫性が崩れてしまう方が、むしろマイナス評価になりやすいと言えるでしょう。
DELE C1は「センス」や「語学的才能」で突破する試験ではありません。 各Pruebaの目的を理解し、求められている役割を正確に果たすことで、 十分に合格ラインへ到達できる試験です。
ヨルスペオンラインでは、DELE C1を見据えた文法・読解力の土台づくりはもちろん、 作文や口頭試験で求められる構成・論理マーカー・表現の選び方まで、 日本語で一つずつ確認しながら対策を進めることができます。
正しい準備を積み重ねれば、DELE C1は決して「遠すぎる試験」ではありません。 上級レベルとしての確かな手応えを、ぜひC1で形にしていきましょう。

