スペイン語の公的資格として世界的に認められているDELE。その中でもB2(中上級レベル)の口頭試験は、多くの受験生が「一番緊張する」「何から手を付けていいか分からない」と感じる難関パートです。

面接官の前でスペイン語だけで20分近く話し続けるプレッシャー、抽象度の高い社会問題について意見を述べる難しさ、そして論理性・流暢さまで評価されるというプレッシャー。B1までは「なんとか話せれば合格」という感覚でも、B2になると一気にハードルが上がったように感じる方が多いと思います。

ただし、DELE B2の口頭試験は決して「センス」や「度胸」だけで戦う試験ではありません。タスクの形式、時間配分、評価基準、そしてよく使われるフレーズさえ押さえれば、「どのように答えを組み立てればよいか」がかなりクリアになります。

この記事では、公式の模擬試験をもとに、DELE B2口頭試験の3つのタスクの内容と流れ、合格を勝ち取るための回答戦略、そしてそのまま使えるスペイン語フレーズを、日本語でできる限り丁寧に整理して解説していきます。

DELE B2口頭試験の概要と時間配分

まずは、DELE B2口頭試験全体の構造をざっくり押さえておきましょう。B2では、準備時間20分+本番約20分という構成になっています。

フェーズ内容時間の目安
準備タスク1・2・3の資料を読み、メモを作成約20分
本番タスク1〜3を連続して実施約20分

準備時間中は、各タスクに関する資料(提案文・写真・アンケート結果など)を読み、メモを取ることができます。ただし、本番でそれを「読み上げてしまう」と減点対象になりやすく、あくまで話す内容を整理するためのメモとして使う必要があります。

本番の3タスクの構成と時間配分のイメージは次の通りです。

Tarea内容形式時間(目安)
Tarea 1提案の評価と議論独話+試験官との対話6〜7分
Tarea 2写真に基づいた状況描写と会話独話+試験官との対話5〜6分
Tarea 3アンケート結果についての意見表明試験官との対話のみ3〜4分

B2の口頭試験では、単に「スペイン語で話せるか」だけでなく、

  • 提示された情報を理解し、自分の言葉で要約・評価できるか
  • 論理的な構成で意見を述べられるか
  • 相手(試験官)とのやり取りがスムーズにできるか

といった「中上級らしいコミュニケーション力」が評価の中心になります。

DELE B2口頭試験の3タスクの流れと攻略ポイント

ここからは、DELE B2口頭試験の3つのタスクについて、それぞれの目的・よく出るテーマ・回答の組み立て方・使えるフレーズを具体的に見ていきます。

Tarea 1:提案の評価と議論

Tarea 1では、ある社会的な問題について、複数の解決策・提案を読み、それぞれのメリット・デメリットを評価することが求められます。その後、試験官との対話の中で、提案についてさらに深堀りしていきます。

公式モデルでよく取り上げられるテーマの一つが「外国語学習の問題」です。例えば次のような提案が並びます。

  • 主要科目を外国語で教える
  • 授業時間数を増やす
  • 休み時間も外国語で話すことを義務付ける
  • 現状維持(必要になった時に学べばよい)
  • 親向けのコースを提供して意識を変える

受験生は、最低でも4つの提案に言及することが求められます。文法の正確さも大切ですが、それ以上に「それぞれの提案をきちんと評価できているか」が評価の中心になります。

回答の基本構成は、次のようにシンプルに考えると組み立てやすくなります。

  • 導入:テーマと自分のスタンスをざっくり述べる
  • 各提案の評価:メリット → デメリットの順にコメント
  • 結論:どの提案を優先したいか、組み合わせたいかをまとめる

以下は、そのまま使えるB2レベルの導入・評価フレーズの一覧です。

スペイン語フレーズ日本語訳
Me gustaría empezar analizando las propuestas dadas para mejorar el aprendizaje de idiomas.まず、言語学習を改善するための提案を分析するところから始めたいと思います。
En cuanto a impartir asignaturas fundamentales en lengua extranjera, veo una ventaja clara.主要科目を外国語で教えることに関しては、明らかな利点があると思います。
A favor de esta propuesta, los alumnos se sumergen en el idioma de forma natural.この提案の良い点として、学生が自然にその言語に浸ることが挙げられます。
Sin embargo, el inconveniente sería el nivel de los profesores. ¿Están realmente capacitados para ello?しかし問題点としては、教師のレベルです。本当にそのための訓練を受けているのでしょうか。
En mi opinión, lo más eficaz sería combinar esta medida con cursos para los padres.私の考えでは、この対策を親向けのコースと組み合わせるのが最も効果的だと思います。
Personalmente, estoy en contra de obligar a hablar siempre en lengua extranjera en los recreos.個人的には、休み時間に常に外国語で話すことを義務付ける案には反対です。

このように、En cuanto a / A favor de / Sin embargo / En mi opinión / Personalmente, … といった論理マーカーを意識的に散りばめることで、「B2らしい」論理的なスピーチを作りやすくなります。

Tarea 2:写真に基づいた状況描写

Tarea 2では、1枚の写真を見ながら、そこに描かれている状況を推測を交えながら説明します。その後、試験官から関連する質問を受け、そのテーマについて対話を続けます。

公式モデルでよくあるのが、例えば次のようなシーンです。

  • 旅行中にトラブルに遭ったカップル(空港・ホテルなど)
  • 職場での会議やプレゼンテーションの様子
  • 家族が自宅で何かを相談している場面

B2では、単に「見えたもの」を並べるだけでは不十分で、推測の表現・過去の推測・これから起こりそうなことまで言及できると高評価につながります。

例えば、「旅行中のトラブル」を描いた写真に対しては、次のような流れで話すことができます。

  • 状況の描写:どこで・誰が・どんな表情か
  • 現在の推測:何が起きたのか・なぜ困っているのか
  • 過去の推測:ここに至るまでにどんなことがあったのか
  • 未来の推測:この後どうなりそうか・どんな解決策があるか

そのまま使えるフレーズの例をいくつか挙げておきます。

スペイン語フレーズ日本語訳
Por su lenguaje corporal, parece que están muy estresados.身体の動きからすると、とてもストレスを感じているように見えます。
Imagino que han perdido su vuelo, porque ella está llamando a la agencia de viajes desesperadamente.彼女が必死に旅行代理店に電話しているので、フライトを逃してしまったのではないかと想像します。
Probablemente ya hayan intentado hablar con la aerolínea sin éxito.おそらくすでに航空会社と話そうとしたものの、うまくいかなかったのでしょう。
Es posible que tengan que pasar la noche en el aeropuerto.空港で一晩過ごさなければならない可能性もあります。
Si estuviera en su lugar, yo buscaría un hotel cercano y reclamaría el reembolso más tarde.もし自分が彼らの立場なら、近くのホテルを探して、払い戻しは後で請求すると思います。

このタスクでは、parece que / imagino que / probablemente / es posible que / si estuviera en su lugar… のような「推測・仮定」の表現を意識して組み込むことで、一気にB2らしい話し方になります。

Tarea 3:アンケート結果への意見表明

Tarea 3は、準備時間のない即興の対話タスクです。提示されたアンケート結果やグラフを見て、自分の意見を述べたり、自国の状況と比較したりしながら試験官と会話します。

モデルでよく見られるテーマの一つが「リサイクル習慣」です。例えば、

  • スペイン人の90%が「何らかの形でリサイクルしている」と回答
  • 一方で、実際のリサイクル率が低い分野もある(家具など)
  • リサイクルしない理由は「スペースの不足」「関心の低さ」など

ここでは、数字をきちんと読み取り、比較の表現を使いながらコメントすることがポイントです。

スペイン語フレーズ日本語訳
Lo que más me llama la atención es que el 90% recicla vidrio, pero solo el 28% recicla muebles.最も印象的なのは、90%の人がガラスをリサイクルしている一方で、家具をリサイクルしているのはわずか28%に過ぎないという点です。
En mi país, a diferencia de España, la gente no tiene tanta falta de espacio.私の国では、スペインと違って、それほどスペースの不足はありません。
Sin embargo, sí que hay mucha desconfianza en el sistema de reciclaje.しかし、リサイクル制度そのものに対する不信感はかなりあります。
Creo que sería necesario invertir más en campañas de información.情報キャンペーンにもっと投資する必要があると思います。
Desde mi punto de vista, los datos muestran que la gente está dispuesta a reciclar si es sencillo.私の視点では、データは簡単であれば人々はリサイクルしたいと考えていることを示していると思います。

このタスクでは、lo que más me llama la atención / a diferencia de / sin embargo / creo que / desde mi punto de vista などの表現を駆使しながら、「数値 → コメント → 自国との比較」という流れを意識すると話しやすくなります。

DELE B2口頭試験を突破する3つのコツ

B2レベルになると、「文法の正確さ」だけでなく、話し方の戦略がスコアに大きく影響します。ここでは、私が多くの受験生を見てきた中で特に重要だと感じるポイントを3つに絞って紹介します。

  • ① 論理マーカーを意識的に使う
    スペイン語で意見を述べる際には、Además, Por lo tanto, A pesar de que, Sin embargo, En cambio などの接続詞を適度に入れていきましょう。内容が同じでも、論理マーカーがあるだけで「構成力」が一段階上に見えます。
  • ② 黙り込まないためのつなぎ言葉(フィラー表現)を準備する
    考えがまとまらないときに沈黙してしまうと、どうしても印象が悪くなります。Déjeme pensar un momento…, Es decir…, Cómo decirlo…, Bueno, en general… のような「つなぎ言葉(フィラー表現)」をいくつか暗記しておくと、時間を稼ぎつつ会話をつなぐことができます。
  • ③ 試験官を「対話相手」として扱う
    特にTarea 3では、一方的に説明するのではなく、¿Qué opina usted?, ¿Pasa lo mismo en su país? のように、試験官にも質問を投げながら会話を作ると、高く評価されやすくなります。

準備20分の使い方:ここで勝負が決まる

DELE B2の口頭試験では、「本番20分」以上に準備時間20分の使い方が結果を大きく左右します。この20分で、次の3点を意識的に仕上げておくと、本番での不安がかなり減ります。

  • Tarea 1:各提案について、メリット・デメリットを1つずつメモする
  • Tarea 2:写真の状況について、「現在・過去・未来」の推測を1文ずつ用意する
  • Tarea 3:アンケートの数字で気になる点と、自国との違いを2〜3点メモする

ここでも、完璧なスペイン語で長い文章を書く必要はありません。「キーワード+矢印」くらいのラフなメモで十分です。重要なのは、「どの順番で何を話すか」を頭の中で一度シミュレーションしておくことです。

準備の質が高ければ高いほど、本番では「メモを見ながら、用意した論理マーカーとフレーズを口に出していく」感覚に近づきます。

ヨルスペオンラインでDELE B2口頭試験の土台を作ろう

ここまで見てきたように、DELE B2の口頭試験は「その場のアドリブ力」だけで戦う試験ではなく、形式と評価基準がはっきり決まっている試験です。裏を返せば、事前に準備できる部分が非常に多いということでもあります。

ヨルスペオンラインでは、A1〜C1までの文法・語彙・読解を日本語で丁寧に解説した動画に加えて、DELE・西検に向けた作文添削や質問対応も行っています。B2口頭試験対策としても、

  • タスク1のテーマ(教育・環境・テクノロジーなど)について、論理マーカーを使った意見文を一緒に作る練習
  • タスク2で使える「推測・仮定」の表現を、実際の写真やイラストを使って反復練習
  • タスク3のアンケート結果を想定した、数値の読み取り・自国との比較表現のトレーニング
  • LINEでの質問を通して、実際に使うスクリプトの微調整や不自然な表現のチェック

といった形で、「試験本番でそのまま使えるスペイン語」を一緒に整えていくことが可能です。

DELE B2口頭試験は、正しい準備をすれば決して「怖い試験」ではありません。
中上級レベルの第一歩として、B2でしっかりと「スペイン語で論理的に話せる感覚」を身につけていきましょう。
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この記事を書いた人

Take(吉川)

ヨルスペ講師Take

前職の社内留学制度でペルー留学を経験し、ゼロから
DELE C2 にわずか 11 ヶ月で合格。スペイン語技能検定1級合格(文部科学大臣賞)。

スペイン語教室「ヨルスペ」主宰、「ヨルスペオンライン」講師として延べ2万人以上にスペイン語を指導。

X(旧Twitter)、YouTube、Instagram、Threads など各種SNSでもスペイン語情報を発信中。合計フォロワー数は 1.7万人以上


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