スペイン語学習を続けていると、「そろそろ何か公式な資格を取りたい」「A1は持っているから次のステップに進みたい」と感じるタイミングがやってきます。そのときに真っ先に候補に挙がるのが、DELE A2です。
DELE A2は、CEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)における初級レベルに相当し、「日常生活で実際に使えるスペイン語がある程度身についています」ということを客観的に証明してくれる資格です。
このレベルでは、次のようなことができることが求められます。
- 日常生活で頻繁に使われる表現を理解し、実際に使える
- 自分や家族、仕事、住んでいる場所、趣味などの身近な話題について、簡単なやり取りができる
- 過去の出来事や最近の経験について、シンプルな文をつなげて説明できる
また、DELE A2はスペインでの滞在許可申請など、実生活の手続きでも要求されることの多いレベルです。「せっかく勉強するなら、日常生活や仕事にも活かせる資格を取りたい」という方にとって、一つの大きな目標になります。
この記事では、DELE A2の試験形式と評価基準、A1からの難易度アップのポイント、各試験(読解・作文・リスニング・口頭試験)の概要と攻略の考え方を、できるだけ分かりやすく整理して解説していきます。
DELE A2全体の試験構成と時間配分
まずは、DELE A2がどのような試験で構成されているのか、全体像を押さえておきましょう。DELE A2は、次の4つの試験(Pruebas)で構成されています。
| 試験 (Prueba) | 内容 | タスク数 | 設問数 | 時間 | 配点 |
| Prueba 1 | 読解(Comprensión de lectura) | 4 tareas | 25問 | 60分 | 25% |
| Prueba 2 | リスニング(Comprensión auditiva) | 4 tareas | 25問 | 40分前後 | 25% |
| Prueba 3 | 作文・筆記交流(Expresión e interacción escritas) | 2 tareas | – | 45分 | 25% |
| Prueba 4 | 口頭表現・会話交流(Expresión e interacción orales) | 3 tareas | – | 12分(+準備12分) | 25% |
どの技能も25%ずつ、合計4分の1ずつの比重で評価されます。「どれか一つだけ得意なら大丈夫」という試験ではなく、読解・リスニング・作文・口頭試験の4技能をバランスよく伸ばしていくことが重要です。
合否は、A1と同じように2つのグループに分けて判定されます。
| グループ | 試験 | 最低点 |
| グループ1 | 読解(Prueba 1)+作文(Prueba 3) | 30点 / 50点満点 |
| グループ2 | リスニング(Prueba 2)+口頭試験(Prueba 4) | 30点 / 50点満点 |
つまり、どちらか一方のグループだけ高得点でも合格にはなりません。グループ1・グループ2の両方で30点をクリアして初めて「Apto(合格)」になります。
目安としては、
- 各グループ(読解+作文/リスニング+口頭試験)で50点中30点以上を取る
- 個別の試験では25点中15点前後を一つの目標ラインにする
というイメージで取り組むと、「どの技能でどのくらい取れれば合格圏内か」という感覚が掴みやすくなります。
DELE A2とA1の違い:どこで難易度が上がるのか
次に、「A1まではなんとなくイメージできるけれど、A2になると何が変わるのか?」という部分を整理しておきましょう。主な違いは、次の3点です。
- 時間と情報量の増加
読解(Prueba 1)の試験時間がA1の45分から60分に増え、扱うテキストの総語数も増えます。単に「長い文章」になるというよりも、複数の短いテキストを同時に処理する力が求められます。 - 作文のボリュームアップ
作文(Prueba 3)で書く量が、A1の合計約65語から、A2では130〜150語程度とおよそ2倍になります。文を単発で書くだけでなく、接続詞を使って文同士をつなげる力が必要になります。 - 文法の要求レベル
現在形だけでなく、点過去・線過去・近い未来・簡単な接続法現在など、過去の出来事や理由、自分の意見・予定を時間軸と一緒に説明する力が求められます。
とはいえ、「ネイティブのように自由に過去形を操れるようになっていなければいけない」ということではありません。A2レベルで見られているのは、
- よく使う動詞について、点過去・線過去をある程度区別して使えるか
- 接続詞(porque, pero, así que など)で文を自然につなげられるか
- 多少間違えても、全体として「何を伝えたいのか」が理解できるか
という、ごく実用的な部分です。ここからは、各試験ごとに内容と攻略の考え方を見ていきます。
Prueba 1:読解(Comprensión de lectura)
読解は、合計25問。テキストは、私的・公的・教育的な場面から幅広く出題されますが、どれも日常生活でよく目にするタイプの文章です。
| Tarea | テキストの種類 | 目的 | 攻略のヒント |
| Tarea 1 | 手紙・Eメールなどの私的な書簡 | 主要なアイデアを理解する | 誰が・いつ・どこで・何をするのか、といった基本情報を素早く特定する練習をしておきましょう。 |
| Tarea 2 | ニュース、パンフレット、広告など | 具体的な情報を拾う | 1つ1つは短い文ですが、複数の短文を同時に読み比べる力が必要です。 |
| Tarea 3 | 掲示、案内、説明文など | 条件やニーズを結びつける | 誰が何を探しているか、どのサービスがそれに合うか、といったマッチング問題が多く出ます。 |
| Tarea 4 | 伝記・日記・ニュースなど | 主要なテーマや流れを追う | 過去の出来事を追う問題が多く、点過去・線過去の理解が欠かせません。 |
読解の対策としては、難しい新聞記事を無理に読むよりも、広告・案内文・短いお知らせ文など、DELEに近い形式のテキストにたくさん触れておく方が効果的です。
特に、
- 日付・時間・場所・値段などの数字情報
- 必須条件(es necesario, se requiere など)
- 禁止事項(no se puede, está prohibido など)
をぱっと拾えるようにしておくと、Tarea 2〜3の正答率が安定してきます。
Prueba 2:リスニング(Comprensión auditiva)
リスニングも合計25問で構成されています。音声はすべて2回流れるので、一度目で全体の流れをつかみ、二度目で細かい情報を確認する、という意識で聞くのが基本です。
扱われる話題は、日常生活・公的な場所・教育的な場面など、こちらも現実の生活に近いシーンが中心です。
| Tarea | 音声の種類 | 設問数 | 攻略のヒント |
| Tarea 1 | インフォーマルな短い会話(友人・家族など) | 6問 | 日常の活動・趣味・興味などのごく簡単な対話に慣れておきましょう。細かい単語よりも、「どんな状況で誰が何をしたいのか」という全体像をつかむのが先です。 |
| Tarea 2 | 短いメッセージ(ラジオニュースやお知らせの断片) | 6問 | ニュースの見出しや要点など、簡潔な情報の聞き取りに集中します。「テーマ」「場所」「時間」「誰についてか」を押さえられれば十分です。 |
| Tarea 3 | 男女の会話 | 6問 | 6つの文が「男性」「女性」「どちらでもない」の誰に当てはまるかを判断します。誰がどの意見を言ったかに注意しながら、「男性の声/女性の声」を明確に聞き分ける練習が有効です。 |
| Tarea 4 | 録音メッセージ、アナウンス、留守電など | 7問 | 時間情報、安全上の注意、サービスの案内など、予測可能で実用的な内容が中心です。聞く前に問題文をしっかり読んでおき、「どんな情報を取ればいいか」を決めておくと取りこぼしが減ります。 |
リスニング対策では、「すべての単語を聞き取ろう」とするのではなく、
- 誰が/どこで/いつ/何をしているのか
- 数字(時刻・日付・金額・電話番号など)
- よく出る決まり文句(¿Diga?, buenos días, siguiente parada など)
といった、「問題を解くための核になる情報」に意識を絞ることが大切です。音声が2回流れることを活かして、1回目は全体像、2回目は細部の確認と役割を分けるようにしましょう。
Prueba 3:作文(Expresión e interacción escritas)
作文は45分で合計130〜150語程度を書く試験です。タスクは2つに分かれています。
| Tarea | 課題 | 目安語数 | 攻略のヒント |
|---|---|---|---|
| Tarea 1 | 与えられたテキストに返答するメモやEメール | 60〜70語 | 日常の習慣・好み・予定・簡単な経験など、私的な環境の情報を入れることが多いです。 |
| Tarea 2 | 2つの選択肢から1つを選び、記述・物語・意見を書く | 70〜80語 | 過去の活動や経験を、過去形+接続詞でつなげて説明する練習が必須です。 |
採点は大きく分けて、
- スペイン語の運用能力(約2/3):文法・語彙・綴り・文のつながり方など
- タスク達成度(約1/3):指示された内容をきちんと含めているか、語数を満たしているか
の2つの観点で見られます。どんなに文法が正しくても、指示されたポイントが欠けていると点が取りきれません。逆に、多少ミスがあっても、必要な情報をすべて盛り込めていれば、A2レベルとしては十分に評価されます。
特に意識したいのは、次のようなパターンです。
- 過去の経験:
El año pasado fui a España. Allí visité muchas ciudades y conocí a gente muy amable.
昨年スペインに行きました。そこで多くの町を訪れ、とても親切な人たちと出会いました。 - 日常の習慣:
Normalmente me levanto a las siete, desayuno con mi familia y luego voy al trabajo en tren.
普段は7時に起き、家族と朝ごはんを食べてから電車で仕事に行きます。 - 理由・意見:
Me gusta estudiar español porque quiero viajar por América Latina en el futuro.
将来ラテンアメリカを旅行したいので、スペイン語を勉強するのが好きです。
これらはすべて「A2らしい作文」に必ず出てくる要素です。普段の学習の段階から、現在形・過去形・理由(porque)をセットで使う癖をつけておくと、本番でも書きやすくなります。
Prueba 4:口頭試験(Expresión e interacción orales)
口頭試験は、準備12分+本番12分という構成です。タスクは3つに分かれていて、日常生活に直結した内容ばかりです。
| Tarea | 課題 | 時間の目安 | 攻略のポイント |
|---|---|---|---|
| Tarea 1 | 2つのテーマから1つを選び、自分の生活や経験を話す | 2〜3分 | 問題用紙に書かれた構成要素(仕事、時間、理由など)をすべてカバーすることが最優先です。 |
| Tarea 2 | 写真を見ながら、写っている場面を描写する | 2〜3分 | 交通機関、買い物、レストランなど、実生活のシーンをシンプルな現在形で説明します。 |
| Tarea 3 | 模擬的な状況で面接官と会話する | 3〜4分 | 切符を買う、情報を尋ねる、予約するなど、基本的な要求や質問をやり取りできれば十分です。 |
A2の口頭試験で評価されるのは、「高度な会話力」ではなく、次のようなごく基本的なやり取りの力です。
- 面接官の簡単な質問を理解し、すぐに反応できるか
- 現在形・過去形を使って、短い文をいくつかつなげて話せるか
- 必要なときに、自分からも簡単な質問ができるか
特に、Tarea 3では「店員役の面接官に質問する」「もう少し安いものがあるか聞く」など、自分から情報を取りに行く場面が出てきます。普段の会話練習から、
- ¿Me puede decir la hora, por favor?
すみません、時間を教えていただけますか。 - ¿Hay un autobús para el centro?
中心部行きのバスはありますか。 - ¿Cuánto cuesta este billete?
この切符はいくらですか。
のような、即戦力の質問パターンをいくつかストックしておくと安心です。
ヨルスペオンラインでDELE A2合格の土台を作ろう
ここまで見てきたように、DELE A2は「センス」や「度胸」で乗り切る試験ではなく、試験形式・評価基準・必要な文法があらかじめ決まっている試験です。裏を返せば、事前に準備できる部分が非常に多い試験でもあります。
ヨルスペオンラインでは、A1〜C1レベルまでの文法・語彙・読解を日本語で丁寧に解説した動画に加えて、DELE・西検に向けた作文添削や質問対応も行っています。DELE A2対策としても、
- 自由時間・仕事・家族・旅行など、A2で頻出のテーマを使った作文・口頭表現の土台づくり
- 書いた内容をもとに、音読・暗唱用の「自分専用スクリプト」を整える練習
- LINEでの質問を通して、「この表現でA2として自然かどうか」を細かく調整すること
といった形で、試験でそのまま使えるスペイン語を一緒に組み立てていくことが可能です。
DELE A2は、「スペイン語で日常生活を回せるようになるための一つの通過点」です。過去・現在・未来をシンプルな文でつなげる力を養っていけば、合格は決して遠い目標ではありません。
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