スペイン語の文法の中でも、勉強すればするほど悩むのが間接目的語(代名詞 me / te / le / nos / os / les)のニュアンスです。

教科書では「~に」「~へ」のように説明されることが多いですが、実際のスペイン語ではそれだけでは足りません。特に、ある出来事がその人にとって「プラス/マイナスの影響」を持つときに使われる間接目的語は、いわゆる利害の与格(dativo de interés / dativo afectivo)として非常に重要です。

今回は、次のような例文を通して、間接目的語が持つ「被害者・受益者性」のニュアンスを整理していきましょう。

「利害の与格」とは?間接目的語が表す“影響”の感覚

まず押さえておきたいのは、スペイン語の間接目的語には「その出来事が、その人にとってどう作用するか」という視点が強く含まれていることです。

日本語でいえば、「~してあげる」「~されてしまう」「~しちゃったよ(私にとっての出来事なんだよ)」といったニュアンスに近く、文法用語では dativo de interés(利害の与格)dativo afectivo(感情の与格) と呼ばれることもあります。

つまり、間接目的語は単なる「~に」ではなく、その人がその出来事の“当事者”であることを浮かび上がらせる道具だと考えると、理解しやすくなります。

受益のパターン:me を足すだけで「してくれる」になる

まずはポジティブな例、つまり受益者として働く間接目的語から見てみましょう。

  • José prepara mi café.
    ホセは私のコーヒーを作る。
  • José me prepara un café.
    ホセは私にコーヒーを淹れてくれる。

一文目は単に「ホセは私のコーヒーを作る」という事実の説明です。 一方、二文目では me が入ることで、「ホセの行為が私のためになされている」という受益のニュアンスが加わります。

日本語にすると、自然に「~してくれる」「~してあげる」に訳したくなるはずです。 このように、間接目的語が入るかどうかで、人間関係や気遣いまで見えてくるのがスペイン語の面白いところです。

Apágale la luz:その行為は「誰のため」なのか

次は、より日常的な一文を見てみましょう。

  • María ya está dormida. Apágale la luz para que duerma bien.
    マリアはもう寝入っている。よく眠れるように明かりを消してあげて。

ここでの le は、電気を消す行為がマリアのためであることを示しています。 単に Apaga la luz. と言っても「電気を消して」という指示にはなりますが、「マリアの睡眠を良くしてあげたい」という話し手の意図や優しさまでは表現しきれません。

このように、間接目的語は「その行為の受け手の立場」を文の中に登場させる働きをしています。

被害のパターン:me がつくと「~されてしまった」になる

今度は逆に、ネガティブな影響=被害者として働く例を見てみましょう。

  • Una gaviota me quitó el sándwich.
    カモメにサンドウィッチを取られた。

直訳すれば「カモメが私からサンドウィッチを奪った」ですが、me によって「それが自分にとって嫌な出来事だった」という感覚が強調されています。

日本語でも、「サンドウィッチを取られた」と言えば話し手の被害感情は暗黙に含まれていますが、スペイン語では この me がまさに“被害者としての私”を文の中に登場させる役割を果たします。

Mi abuelo se me fue al cielo:感情に寄り添う「利害の与格」

最後は、感情的な影響(dativo afectivo)が強く出る一文です。

  • Mi abuelo se me fue al cielo.
    私の祖父が天国に行ってしまった。

ここでも、祖父が亡くなったという事実だけを述べるなら、単に Mi abuelo se fue al cielo. と言えます。

しかし、se me fue とすることで、「その出来事が話し手である私にとって大きな喪失である」「自分のところから去って行ってしまった」という感情がにじみ出ます。 まさに「利害の与格」「感情の与格」が生きている用法と言えます。

まとめ:間接目的語は「その出来事の当事者」を浮かび上がらせる

分類スペイン語意味・ニュアンス
受益José me prepara un café.私のために淹れてくれる(受益の与格)
配慮Apágale la luz.マリアのために電気を消してあげて
被害Una gaviota me quitó el sándwich.サンドウィッチを取られてしまった(被害の与格)
感情Mi abuelo se me fue al cielo.祖父が天国に行ってしまった(感情への影響)

このように、間接目的語は単なる「~に」ではなく、その出来事が誰にどう影響するのかを丁寧に描き出す役割を果たしています。

スペイン語らしい「人間くささ」や「気持ちの動き」を表現したいときには、ぜひこの利害の与格を意識してみてください。文が一気にネイティブらしい響きになります。

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