スペイン語を勉強していると、「家を買う」を表現したいときに、comprar una casaとcomprarse una casaのどちらを使うべきか迷う方が多いと思います。
どちらも日本語にすればシンプルに「家を買う」なのですが、再帰代名詞seが付くかどうかで、ネイティブが受け取るニュアンスに少し差が出てきます。
この記事では、家・車・服などの具体例を使いながら、comprar+名詞とcomprarse+名詞の違いを整理しつつ、作文するときの実践的な指針として「基本はcomprarを使えばOK」というところまで含めて解説していきます。
comprar una casa と comprarse una casa の基本的な違い
まずは、一番シンプルな対比から確認しておきましょう。
★comprar una casa:単純に「家を買う」
comprar una casaは、もっとも中立的でフラットな表現です。
- Ellos han comprado una casa.
彼らは家を買った。
この文は、「家という物件を購入した」という事実だけを述べています。つまり、
- 自分たちが住むのか
- 別の人に住まわせるのか(子ども、親、親戚など)
- 投資用として買ったのか(賃貸・民泊・売却目的など)
といった情報は、一切含まれていません。
文脈によってはもちろん「自分たちが住む家だろう」と推測されることもありますが、文そのものはあくまで「購入した」という事実だけを淡々と述べている形です。
ですので、作文の観点から言えば、Ellos han comprado una casa.という文自体はまったく問題なく正しい文ですし、この一文だけでスペイン語として不自然になることはありません。
★comprarse una casa:「自分たちのために」家を買う
一方で、再帰代名詞seが付くと、ニュアンスが少し変わります。
- Ellos se han comprado una casa.
彼らは(自分たちに)家を買った。
再帰代名詞が入ることで、その動作の「恩恵を受ける対象」が主語(ellos)自身である、という含みが強まります。
つまり、se han comprado una casaと言うと、聞き手は自然に、
- 投資目的でも、他人のためでもなく、自分たちが住むための家を買ったのだろう
といった解釈をしやすくなります。
もちろん、文脈によって細かい解釈は変わりますが、ざっくりまとめると、
| 表現 | コアの意味 | ニュアンス |
| comprar una casa | 家を買う | 購入した事実だけ。用途は不明。 |
| comprarse una casa | (自分たちのために)家を買う | 住むなど、自分たちの生活のために買ったイメージ。 |
このように、comprarse una casaは、自分たちのための買い物であることを「ちょっとだけ」前面に出すための表現と捉えると理解しやすいと思います。
どんな名詞と相性が良い?「自分たちのために買う」ニュアンスが活きるケース
実際には、comprar+名詞が基本形であり、あらゆる商品に対して使うことができます。そのうえで、comprarse+名詞が好んで使われるのは、「自分たちのために買った」というニュアンスが立ちやすい名詞です。
例えば、次のようなものです。
- 家(casa)
- 車(coche)
- ファッション用品(服・靴・バッグ・アクセサリーなど)
- 家具・家電など、生活に密着した高額なもの
これらは、用途が「自分たちの生活のため」か「投資や他人のため」かで意味が分かれうるタイプの商品です。だからこそ、「自分たちのために買った」ということを示すために、再帰代名詞を付けるケースが出てきます。
いくつか例文を見てみましょう。
- Nos hemos comprado un coche nuevo.
私たちは自分たち用の新車を買った。
(「仕事で使う社用車を会社のために買った」というより、自分たちの生活のための車、というニュアンス)
- Se ha comprado un bolso carísimo.
彼女は(自分のために)めちゃくちゃ高いバッグを買った。
(ちょっと自分へのご褒美的なニュアンスも出しやすい)
- Este año queremos comprarnos un piso.
今年は自分たち用のマンションを買いたいと思っている。
(= 投資用ではなく、自分たちが住むための物件を買いたい)
どれも、comprar+名詞にしても文法的には完全に正しいのですが、seが入ることで「その買い物の恩恵が主語に返ってくる」イメージが強まっていることが分かると思います。
逆に、自分用が前提のものは基本comprarだけで十分
一方で、そもそも「他人のために買う」ことをあまり想定しないような商品に関しては、特に再帰にする必要はありません。例えば:
- アイスクリーム・お菓子
- ペン・ノート・日用品
- 今日の自分の夕食
こういったものは、ふつうに考えれば買った本人がそのまま消費するのが自然なので、comprarで十分です。
- He comprado un helado.
アイスを買った。
- He comprado pan para la cena.
夕食用のパンを買った。
わざわざme he comprado un heladoのように言うと、「自分へのちょっとしたご褒美を買った」的なニュアンスを狙うこともできますが、基本線としてはcomprarで困る場面はほとんどありません。
学習者としての結論:「迷ったら全部comprarでOK」
ここまで色々とニュアンスを説明してきましたが、実際に作文する学習者の立場からすると、結論は非常にシンプルです。
- どのような状況であっても、comprar+名詞にしておけば文法的には正しい。
- comprarse+名詞は、「自分たちのために買う」ことを少し強調したいときのおまけの表現に近い。
- 特に意識して使い分ける必要はなく、まずは全てcomprarで運用できれば十分。
「再帰だから必ずこうしなければいけない」といった厳密なルールがあるわけではなく、あくまでもネイティブの運用上、「ここは自分たちのための買い物っぽさを出したいな」というときに再帰動詞comprarseが選ばれている、というイメージで捉えておくのが現実的です。
そのため、学習の優先順位としては、
- まずはcomprar+名詞を確実に使えるようにする
- 余裕が出てきたら、「自分へのご褒美感」「自分たちのための買い物感」を出すときにcomprarseも選べるようにする
くらいのスタンスでちょうど良いと思います。
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