スペイン語で「値段が高かった」と言いたいとき、どのように表現しますか? 多くの人が真っ先に思い浮かべるのは形容詞 caro ですが、実はもう一つの重要な選択肢として costar があります。

本来的に、costar は「~の費用がかかる」ですが、「高い費用がかかった=値段が高かった」と訳すことができます。今回は、学習者が混同しがちなこの2つの使い分けを、会話でよく使う例文とともに整理していきましょう。

caro:値段や価値の高さを説明する「高額な」

caro は形容詞で、「高価な」「値段が高い」という意味を持ちます。 モノの客観的な“価値”や“価格帯”を説明するときに使われます。

  • Mi coche era caro.
    私の車は高額だった。

この文では「私の車」というモノ自体が「高額なものであった」ことを述べています。 つまり、caroはあくまでモノの性質を表しており、「どれくらい支払って大変だったか」という話者の感情は含まれていません。

日本語に直すと、「値段が高かった」というよりは「高級だった」「値段設定が高かった」に近い響きです。

costar:支払いの「実感」まで含む動詞表現

一方、costar は動詞で、「〜の値段がかかる」「〜の費用がする」という意味です。 しかし、ここで注目したいのは単なる金額ではなく、「支払った当事者の感覚」を表す点です。

  • Me costó mucho mi coche.
    私の車にはたくさん払った。/車は高くついた。

この文のポイントは、間接目的語 me。 これを入れることで、「支払ったのは自分」という意味が自然に加わります。

単に「値段が高い」という客観的な事実ではなく、 「自分の財布が痛んだ」「支払いを実感した」という感覚を伴うのが、costarの魅力です。

会話での自然な使い方を見てみよう

どちらも「高かった」と訳せますが、会話のトーンによって使い分けが変わります。 以下のような会話を見てみましょう。

  • A: ¿Cuánto te costó el viaje?

    B: Me costó un montón. Pagué un millón de yenes.

    (旅行いくらだった?)— めっちゃ高かったよ。100万円払った。

この場合、単に「高額だった」ではなく、「自分が実際にお金を払って大変だった」という実感が伝わります。 caroではなくcostarを使うことで、支払いの重みを強調できるのです。

同じ内容を El viaje fue caro. と言うこともできますが、それは「旅行は高額だった」という客観的な説明。 そこに「支払った自分」の存在やリアルな負担感までは含まれません。

caroとcostarの違いをまとめよう

表現文法的特徴ニュアンス例文
caro形容詞値段・価値が高い(客観的)Mi coche era caro.
costar動詞支払い・負担を伴う(主観的)Me costó mucho mi coche.

つまり、caro=物の性質costar=体験・実感。 この違いを意識するだけで、文にぐっとリアリティが出ます。

日本語でも「高かった」と「高くついた」では少し印象が違いますよね。 スペイン語でもまさに同じで、話し手の立場を反映させることで、文がぐっと生き生きとしてきます。

costarには「精神的に大変だった」という意味もある

ちなみに、costar には金銭的な意味以外にも、「苦労して〜した」「大変だった」という使い方があります。

  • Me costó levantarme esta mañana.
    今朝は起きるのが大変だった。
  • Nos costó mucho terminar el proyecto.
    そのプロジェクトを終えるのは本当に大変だった。

このように、costarは「支払う」という行為を超えて、努力や負担をともなう行為にも広く使えます。 つまり、スペイン語では「金銭的コスト」も「精神的コスト」も同じ動詞で表せるのです。

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